第57話 死命
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週刊「帰還限界点 連載小説」
☆============================= 第57号 (2009/02/27)=====
『生誕、死、そして消滅』(第九話 -4- 死命)
真枝親子と、〈ゴーレム〉というアンドロイドは、互いに眼
をそらさなかった。
「救けてほしい、ですって?」
「そうだ」
「……それは、君の製造元、PPT社から、ということかい?」
神曲の問いは、当たっていた。
「ほんの数日前まで、私はアンドロイド成功例の一つだった。
だが、私には、製作者にとって不都合な、欠陥があったのだ。
私は処分されることになった。
そして、逃亡した。まだ、壊される訳には、いかなかった……」
「知っているよ。君の存在は、たしかにこの物語に必要な歯車
のひとつだからね。君が存在しなければ困る」
神曲の言葉に、ゴーレムだけでなく、尊氏と信濃も驚いた。
「……何故? ……知っている?
私でさえも知らない存在理由を……」
室内に、緊張が走る。
だが………
「おや」
神曲が発した声は、その緊張を崩した。
「いけない……。
これから少々用事があって、出掛けなければならないんだ。
二人とも、留守番を頼んだよ」
「え……?」
「ちょっと、パパ?」
「行ってくるよ」
三人の戸惑いを余所に、神曲はコートを手に取り、玄関のド
アを開けて出ていってしまった。
ぽかん、と立ち尽くしていた尊氏が突然、神曲の消えた玄関
のドアの前まで走った。
「……父さん…?」
ぽつり、と呟くように云った。
「どうしたの?」
信濃が訊ねると、消え入るような声で返事が返ってきた。
「もう、会えないような気がした」
尊氏の後ろ姿が、得体の知れない不安に、小さく見えた。
「父さんと……」
神曲は、マンションを出て、暫らく駅の方角に歩いた。
「そろそろ、いいか……」
マンションが見えなくなった頃、彼は道に立ち尽くして、眼
を閉じた。
すると、彼は突然、DWから跡形もなく消えて、次の瞬間に
は、現実世界に居た。
現実世界の彼の体はベッドの上にあり、頭に数本のコードが
繋がれ、傍らのデスク上のコンピュータと繋がっている。
目覚めるとまず、コードを頭から外した。
コード接続の為に開けてある穴に、チタン製のピンのような
もので栓をする。
デスクには、昔の彼が写った写真がある。 彼の他に、六人。
永瀬光。御名神あずみ。石崎直。飛鳥弥生。新堂真。
「私はただ、楽しみたいだけだ……
残念だったね、新堂……」
写真の中の、飛鳥と寄り添う新堂の笑顔に、皮肉めいた言葉
を掛ける。
「期待してくれていたのかな、私に。だが、私は誰の味方でも
ない。ミカエルも、君も……」
最期の一人に、視点を移す。
「君もだ。藤守ミサヲ」
そして彼は向かう。
新たなる世界の統治者になる可能性を持つ者の一人……
藤守ミサヲのもとへ。
灰色の天井。
灰色の壁。
女が一人、椅子に座っている。
紺色のワンピースを纏い、独白を洩らす。
「……ついに……」
「サタンが生まれる、のかい?」
女たった一人の研究室に、彼の声が響く。
「……久しぶりだね、藤守ミサヲ」
「……PPT社の頃以来ね。真枝神曲」
やがて、彼はサタンの誕生を目のあたりにする。
「さあ! 目覚めなさい!
新しい帝国の王よ。御前が最初にすべき使命を果たすの
よ!」
その声に反応したかのように。
ゆっくりと。
サタンが覚醒した。
開いたその眼は、左が黒。右が赤。
笑った。
それは、生まれながらの魔王だった。
東城神詞が、死んだ。
「……これが、最初の使命?」
「そうよ」
(つづく)
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「そうだ」
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「ほんの数日前まで、私はアンドロイド成功例の一つだった。
だが、私には、製作者にとって不都合な、欠陥があったのだ。
私は処分されることになった。
そして、逃亡した。まだ、壊される訳には、いかなかった……」
「知っているよ。君の存在は、たしかにこの物語に必要な歯車
のひとつだからね。君が存在しなければ困る」
神曲の言葉に、ゴーレムだけでなく、尊氏と信濃も驚いた。
「……何故? ……知っている?
私でさえも知らない存在理由を……」
室内に、緊張が走る。
だが………
「おや」
神曲が発した声は、その緊張を崩した。
「いけない……。
これから少々用事があって、出掛けなければならないんだ。
二人とも、留守番を頼んだよ」
「え……?」
「ちょっと、パパ?」
「行ってくるよ」
三人の戸惑いを余所に、神曲はコートを手に取り、玄関のド
アを開けて出ていってしまった。
ぽかん、と立ち尽くしていた尊氏が突然、神曲の消えた玄関
のドアの前まで走った。
「……父さん…?」
ぽつり、と呟くように云った。
「どうしたの?」
信濃が訊ねると、消え入るような声で返事が返ってきた。
「もう、会えないような気がした」
尊氏の後ろ姿が、得体の知れない不安に、小さく見えた。
「父さんと……」
神曲は、マンションを出て、暫らく駅の方角に歩いた。
「そろそろ、いいか……」
マンションが見えなくなった頃、彼は道に立ち尽くして、眼
を閉じた。
すると、彼は突然、DWから跡形もなく消えて、次の瞬間に
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残念だったね、新堂……」
写真の中の、飛鳥と寄り添う新堂の笑顔に、皮肉めいた言葉
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「期待してくれていたのかな、私に。だが、私は誰の味方でも
ない。ミカエルも、君も……」
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「君もだ。藤守ミサヲ」
そして彼は向かう。
新たなる世界の統治者になる可能性を持つ者の一人……
藤守ミサヲのもとへ。
灰色の天井。
灰色の壁。
女が一人、椅子に座っている。
紺色のワンピースを纏い、独白を洩らす。
「……ついに……」
「サタンが生まれる、のかい?」
女たった一人の研究室に、彼の声が響く。
「……久しぶりだね、藤守ミサヲ」
「……PPT社の頃以来ね。真枝神曲」
やがて、彼はサタンの誕生を目のあたりにする。
「さあ! 目覚めなさい!
新しい帝国の王よ。御前が最初にすべき使命を果たすの
よ!」
その声に反応したかのように。
ゆっくりと。
サタンが覚醒した。
開いたその眼は、左が黒。右が赤。
笑った。
それは、生まれながらの魔王だった。
東城神詞が、死んだ。
「……これが、最初の使命?」
「そうよ」
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