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第46話 『三人』(第八話 -1- 凝視)

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    週刊「帰還限界点 連載小説」

☆============================= 第46号 (2009/02/07)=====


『三人』(第八話 -1- 凝視)


皆、複雑な面持ちとなり声が出なくなっていた。自分達は今
後の人間の種としての進化を担う仕事をしていると言う自負が
あった。しかし種の進化ではなく、滅亡との天秤にかけられて
いるのだ。それは、もう以前のような気持ちで仕事が出来ない
事を意味していた。
しかし、その緊張感に耐えられない人物が現れた。

「あのぉ……お願いだから、誰か喋ってよぉ……」

この話しの一番の張本人、問題の元凶、本人としては申し訳
なさそうではあるが他人には鼻にかかった甘えるような声にし
か聞こえない御名神あずみの声であった。

「はぁぁぁぁぁぁ……」

皆思うところはあったが、あまりのお惚けさに脱力し、誰も
が思わず深いため息をついたのだった。唯一人、彼女と長い付
き合いの新堂は、それを沈痛な面持ちで見ていたのだった。
とは言えそれが効を奏してか、皆の緊張がある程度和らぎ、
新堂に対する質問が再び始まった。

「新堂主任、一ついいですか?」

はじめに手を挙げたのは、妙崎建であった。新堂は『意外と早
く切り出してきたな』と内心ほくそえんでいたが、表情は変え
ずに建を促す。

「DWの崩壊が世界の崩壊につながる……
って事ですけど、それを阻止する策はあるんですか?」

建の問いはその場にいた全員が思っていたことであった。し
かし、ここでこの質問を建が新堂に投げかけた事には深い意味
があった。その意味に気付いているのは本人達だけで、他のメ
ンバーにとっては至極自然な問いに聞こえていた。

『単刀直入だな……
つまり、これからの話しの流れ次第では〈あっち〉につく…
…か』

新堂は一瞬ふ……と吹き出すと、建に向けて言い放った。

「策はある……が、これを話す前に君には選んでもらわなけれ
ばならない。
君は未だ研究員だ。聞くなら〈こっち〉側の人間になっても
らう事となるがいいかね?」

『やっぱりそうくるよな……』

建は決断を迫られていた。

「真ぉ~、たっくんは未だ高校生だし、正社員じゃないし……
これ以上は……」

あずみが建を思ってか、先ほど感じた違和感がそうさせたの
か、建をチームから外すよう促してきた。しかし、新堂は本人
に決めさせると首を縦に振らなかった。

「わかりました。〈こっち〉で微力を尽くします。」

「ありがとう。君が我らのチームに居てくれて助かるよ。」

「いいですよ。新堂主任はともかく、他の皆さんがヘマをやら
かしかねませんからね。そんな事でこの史上最高の頭脳が無に
帰するのは避けたいですからね……」

この短い会話の中に隠された言葉に皆は気付かず、建に対す
る非難の声が当然のようにあがったのだった。


(つづく)

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