第28号 捜索
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週刊「帰還限界点 連載小説」
☆============================= 第28号 (2008/12/11)=====
『夜明け前』(第六話 -4- 捜索)
一方、七月とリンは。
ほうぼう捜し回ってみたものの、藤守マリアらしき人間の足
跡は全く掴めなかった。
「……疲れた……
何で乙夏なんかのためにこんなに苦労しなくちゃいけないの
よ?」
「大丈夫ですか? 少し休みましょうか?」
ずっと歩き回っていたせいで、疲れて愚痴をこぼす七月に、
リンが声をかける。
「ええ……有難う」
リンに促されて、近くの公園のベンチに座り込む。
「さて、これからどうしようねぇ」
「そうですね……目ぼしいところはほぼ廻りましたし……
でも、ここからそう遠くへは行っていないと思います」
「どうして?そんなことが分かるの?」
「……気配が、するんですよ。
何となくなんですけどね。
乙夏さんにかけられていた〈術〉と同じような……」
リンがここで休もうといったのは、その気配を何となく感じ
取ったからではないか、と七月は気づく。
「でも、確かではないです。その〈気〉を辿っていけば辿り着
けるのかもしれないですが……」
「なんだ、まだ確実ってわけじゃないのね」
期待のすぐ後は落胆、そんなケースを繰り返してばっかりだ
なぁ、と改めて七月は肩を落とす。
「ねーぇ、そっちで何か分かったこととかないのー?」
突然、七月がナビゲーターのあずみに向かって叫んだ。
「あっ、もしかして、うちらのこと!?」
のほほんとモニターを見ていたあずみは、自分が呼ばれてい
ることにやっと気づき、メインルームに戻った。建も後につい
ていく。
『ごめんねぇー。
こっちでも色々捜してみたんだけど、まだ何も分からないん
だよぉ』
メインルームから、あずみは七月達に応える。
「そうなの?そっちからは、捜すことってできないの?」
『この世界に入り込んだ人間っていうのは、大体こっちの〈探
知センサー〉で探せるもんなんだけど、彼女の場合、乙夏のと
ころに来てからの痕跡が、全く掴めないんだ』
「じゃぁ、捜しようがないじゃん!
一体どうしろっていうのよ!?」
期待外れな回答に、七月はまたもやあずみに食ってかかる。
困ったあずみは、
『そんなこと言われたってぇ……』
と頭を抱える。
「センサーに、引っかからないってことですか?」
あずみと七月のやりとりを聞いていた建は、ふと、そんな疑
問を投げ掛ける。
「そういうことになるねぇ」
「とにかく地道に捜すしかないようですね」
落胆する七月に、リンは元気付けるように言うが、それが果
てしもなく困難なことだと、リン自身も感じていた。全く手掛
かりがないのでは、この広い神代町内を歩き回ったところで、
結局は見つかりっこないだろう。
「故意に消された、ということはないですか?」
「!!」
建の言葉に、「もしかしたら」の可能性を賭けて、七月たち
にこう言った。
『あのさぁ、七月ちゃ~ん。
もしかしたら、彼女の足跡は何かの力で故意に消されてるか
もしれないんだよ。それを調べてみるから、もう少しだけ、捜
してみてくれるかなぁ?』
「じゃ、もしかしたらそっちで何か分かるかもってこと?」
『あまり期待はしない方がいいけどね~』
「分かりました。では、何かそちらの情報が入ったらお願いし
ます。七月、行きましょう」
リンが七月の背中を押すと、七月は仕方なく歩き出す。
「あんなこと言って、本当に大丈夫なんですか?」
いささか無責任そうなあずみの発言に、建は怪訝そうに聞く
が。
「でも、ヒントをくれたのは君だよ?
ここはゲームの中だからね。誰かが「故意に」自分の足跡を
消すことなんて、難しくないと思う」
一応このゲームの基礎知識を新堂から聞いていたあずみは、
この中で起こっていることが、「現実」でありまた「仮想」世
界であること位は、わきまえているつもりだった。
「〈誰か〉が故意に足跡を消したということは……
見つかるとまずいから、とか、この世界とは違うものが入り
込んだから、ここのセンサーに引っ掛からないとか……
色々考えられますよね」
建が色々と推量を働かせる。
「見つかるとまずいところに、何でわざわざ入り込むのさ?!
もしそうだとしたら、不法侵入だよ!?」
「……ハッキング、ってことですかね」
「……ハッキング!?」
その言葉に、あずみははっとした。ついさっき、「藤守ミサ
ヲ」が、このDW世界にハッキングして侵入している、という
情報を、自ら新堂や東城に報告したばかりだった。
もしかして、もしかすると……
「藤守マリア」は、「藤守ミサヲ」にナビゲートされ、この世
界に入り込んだ、という仮定が出来る。
「そういうことだったのか……」
あずみは表情を曇らせる。そこへ建が、
「そうだとすれば、ハッキング先を追跡すれば、侵入者は見つ
かるはずですね。やってみますか?」
と、当たり前の提案をする。
「……そ~だねぇ~……やってみようかぁ~……」
あまり乗り気でないあずみと、プログラムを見られる、とい
う期待でわくわくしている建が、コンソールの前の椅子に座り、
数々のモニターとキーボードに向かった。
「はぁぁ~膨大な量だねこりゃ~」
やってみよう、とは言ったものの、見ただけでその意気込み
が挫けそうな、あずみであった。
(つづく)
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