うねめ物語(片平町の昔話)
一三〇〇年ほどの昔の奈良時代のころ。
大和の国(今の奈良県)から葛城王というえらい人が塩ノ入郷(今の片平町)に六年もたまった年貢をとりたてにやってきた。
その頃の里は何年も凶作が続き、里の人たちは何とか税をまけてもらおうと王にお願いしたところ王はカンカンに怒ってしまった。
困った里の人たちは美人で賢い春姫を召し出して王のご機嫌をとった。
「安積山 かげさえ見ゆる 山ノ井の 浅き心を われ思わなくに」
と歌を詠んだ。
葛城王は
「都の花を鄙に見る」
とかえして、ことのほか喜び、六年分の年貢とさらに三年の免税を約束して、春姫を伴って大和の国へ帰っていった。
時は流れ、春姫は采女として宮中に仕えていたが、望郷の思いはつのるばかりだった。
中秋の名月の夜、春姫は意を決し猿沢の池に身を投げたように見せかけて、一路故郷への道を急いだ。
ようやくわが家にたどり着くと家族はすでに無く、悲しみにくれた春姫は山ノ井の清水に身を沈め、この世を去ってしまった。
里の人々は、春姫をあわれに思い、山ノ井の清水のそばに小さな塚をつくり「采女塚」として春姫の霊を供養したと伝えられている。